2020年3月6日に公開された日本映画、「Fukushima 50」は9年経ち、やっと世間からも認められた映画となったかもしれない。
映画の評価はどうであれ、今まである意味タブーとされたこの題材がエンターテインメントに使用されることになったのは大きなステップだと感じたい。
主演キャスト
キャストも日本を代表をする俳優、佐藤浩市と渡辺謙が主演を演じている。他にも豪華な面々が出演しており、吉岡秀隆、火野正平や現在注目の女優、吉岡里帆も佐藤浩市演じる伊崎利夫の娘役で出演している。
当時、東日本大震災が起こった時には関西方面にいて高校生だったという彼女。
他の出演陣の多くは恐らく関東方面にいて、当時の状況も年齢ながら鮮明に覚えており心境や自分の身に起きたこととも照らし合わせながら演じることができただろう。
しかし、このような歴史映画の場合、若者を演じるのは少なくとも当時の状況を肌で感じられなかった世代も多いかもしれない。
多数インタビューでも吉岡はそのような状況でもテーマに取り組み役を真摯に演じた様子が語られている。また、周りのキャスト陣の支えもあり、避難所で父の安否を案じる娘を演じきっていた。
真近で感じられなかった、当時避難所にいなかったかもしれない出演陣が、その場の状況を演じることはベテランの俳優でも、フィクションではない役を演じることは難しいはずだ。それをバックアップするように、この映画でも話題になっていたのは、セットや背景の再現度だという。
「ホワイトアウト」、「沈まぬ太陽」などでも知られる監督・若松節朗はこの当時の状況を見事に再現し、実際に尽力していた職員も涙するほどの精密な作りだったという。
キャストの面々を見ても、豪華な出演陣による名作と言わざるを得ないラインナップだが、この映画が注目され、美化をされているという反応がありながらもなお鑑賞者数が多いのは、演じた彼らだけでない。それを支え、色を添えた発電所などのセットなのであろう。
多くの人に知ってもらい、その時何が行われていたか、実際に何をしたのかを伝えることは真意でもあり、それがマーケティングというものだ。ただ実際に被害にあったり、体験した人たちにとっては、単なるエンターテインメントと捉えられることもあるだろう。
原発事故
再現VTRやニュースなどによる当時の状況のレポートなどは今まであったが、この福島の原発事故をこのように映画の歴史に刻む作品を初めて残したことは、私は不可欠のことであると感じた。
しかしながら、この映画でやはり指摘されるのは当時の状況の美化、また、実際の被害の状況などを考えると、少々誇大しすぎているように思った。
この現象が起こる理由は、私たちはこの映画に出演する俳優陣をよく知りすぎているからかもしれない。
実際に他の戦争や事件や事故を扱う映画を見ても、やはり多くの華々した世界を多く演じてきた彼らが、凄まじく汚れることなく自身の顔や姿を保ち映画に出ているのは、現実味をかけているように見える。
商業目的でもこのような題材を扱う際に、有名な面々を揃える必要はないと思う。男性の出演者は時すでに遅しだが、そういった面では吉岡里帆などこれからもっと活躍するであろう女優を人選し、これを機にさらに多くの役に出演するきっかけになることは、これからの女優人生にもプラスになることであるに違いない。そんな意味でも、この「Fukushima 50」は歴史を繋いでいく映画と言えるかもしれない。
衝撃や被害があまりにも多く、そして甚大であったことから、まだあまり多くを語られていない話題、東日本大震災のテーマをこれから扱う映画は、これを機に増えていくと思う。
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類似の作品
同様の話題の映画では、少々過去の作品となるが、「遺体 明日への十日間」も併せて観てもらいたい。
ポイント
この作品は福島より北となる仙台での津波被害などによる遺体安置所での当時の状況を、実際にジャーナリスト石井光太が取材しまとめたものを原作に映画化したものである。
こちらも当時の状況を伝え、風化させてはならない人々の様子や事実をよく描いた作品だ。
出演陣も西田敏行、佐藤浩市(こちらにも出演している…)や佐野史郎など見かける名優も多数演じている。
あまり指摘はしたくないが、やはりこの手の映画では同様のテーマで同じキャストを何度も起用することは、避けてほしい。どうしても真剣に捉えられず、また、ファンを遠ざけるきっかけにもなってしまうことを伝えたい。
アカデミー賞や数々の賞、また、連続テレビ小説、大河ドラマなど伝統ある作品に出演してきたことは功績を讃えることであり、また、素晴らしいものでこれが指標となることは言うまでもない。
しかし、市場とはまた離れた、映画をどのように伝えたいか、どんな形で、誰に伝えたいのか、どう感じて欲しいのかを作品に反映させることも、映画の醍醐味ではないのかと感じる。
もうハリウッド化の時代は終わったのかもしれない。これからの日本映画の動向も深く注目していきたい。