翔んで埼玉 復刊 関東

翔んで埼玉 復刊 関東

 

「翔んで埼玉」をご存知だろうか。2019年に公開された映画だが、この映画は漫画が原作となっている。その漫画が発売されたのは、実は1980年代だったのだ。なぜこの漫画がこんなにも再びヒットすることになったのか。それは、まさに現代の文明の力とも言えるが、2015年頃、SNSなどでこの漫画の内容が話題になり、そして全国放送のテレビ番組「月曜から夜ふかし」で取り上げられた。当時、この番組では各都道府県の県民性や、県民同士のいがみ合いなどを特集し、特に関東の隣り合わせである埼玉県、千葉県、茨城県や栃木県などの県民双方のイメージについて紹介していた。この県民同士の争いは関東だけでなく、全国で起こっていることであり、恐らく世界中でもこのようないがみ合いはあるだろう。このようなことは本来、ネット上や口頭上での県民同士のイメージによる発言が多かったが、実は80年代にすでにこのような埼玉県に対するイメージ、しかもかなり荒く、きつい内容で表現をしている。「翔んで埼玉」の埼玉県は、東京都の間に関所があり、あらゆる方面から劣っているため、差別を受けていた。東京都では特に出身地による差別があり、高校の入学時のクラス分けでも、映画の中では23区でさらにランクが振り分けられている。そんな高校での埼玉県出身はZ組であり、授業を含め全て行動は別であり、東京都出身の生徒からは「埼玉なんて言ってるだけで口が埼玉になるわ」などと言われる始末。漫画では出てこないが、映画では、埼玉県民解放運動として伝説がラジオで放送され、それを家族が聞いているという設定なのだが、妻に対して夫が「チバラキ」などと一括りにされ、妻が怒りを爆発する様子も描かれている。この映画では埼玉県同様、茨城県も差別の対象になっている。埼玉ほどではないが。

映画の主演は二階堂ふみとGACKTが演じているが、この役ならびに魔夜峰央の世界は、特に必要なキャストであったに違いない。その他にも京本政樹や伊勢谷友介など、メイクをしなくとも、目鼻立ちがしっかりしており、いわゆる顔の濃い配役となっている。漫画「パタリロ」など代表作を出している魔夜峰央の漫画では、デフォルメした描写も多いが、基本的に登場するキャラクターはこのように美形なキャラがとても多いがゆえ、このような面々となったのだろう。

最近の映画では、史実に基づいたり背景や描写を忠実にする、といったよりリアルに描くものも多くなり、技術の進化を感じさせる。しかし、「翔んで埼玉」は、魔夜峰央の世界に忠実であり、一見やりすぎと思われる描写も、漫画の世界をしっかりと再現しているからこそ、その生き過ぎた世界に入り込める要素となっているに違いない。原作を読み映画を見た読者たちからすれば、納得の俳優と描写であった。白鵬堂百美は男性の設定だが、映画では男性ではなく女性が演じていることや、原作が未完であるがゆえ、ストーリー構成は伝説パートと現代パートの行き来となっているなど、映画独自の設定が多数ある。

あまりにも表現が行きすぎている部分も感じられるところがあり、何も漫画や映画にしなくても、と思われる人も多いと思う。しかし私は、むしろこの県民同士が各々心に秘めている隣接した県民に対するイメージや気持ちを現実味なくユニークに表現した作品だと思う。「ここまで言わなくとも」と表立っていうが、私たちは全くそんなことを思っていないわけでなく、どこかしらひとかけらでも思い当たる節があり、納得ができるからこそ、この映画もヒットに繋がっているのだろう。もともと、こういった「ディスり」は最近浮上したものではなく、どこの世界にも地域が分かれている以上起こっている現象であり、人々が「いけないこと」として言わないように日本人は秘めている部分もあったが、他の国では各州の特徴や人柄などを一括りにし決めつけ、いがみ合うことは多い。

現代の社会ではそのような差別がタブーとされているが、一方でこのような映画がヒットする鍵というのは、タブー視されていることを表現できない現代だからこそなのかもしれない。代弁者が表現、発言をしてくれそれに賛同をする。選挙などでトップを決めるのと同じように、誰かの意見に乗っかり自分は正しいことをしているかのように美化してしまうのである。県民性に限らず、人種や国同士でもこのような各々に対するイメージは厚く、一個人がそうでなくともそのイメージを壊すことは難しい。この映画の中では、主人公二人が、GACKT演じる麻美麗が埼玉県出身であることで東京都出身で埼玉県全体を蔑視していた百美の心を動かすきっかけになるのである。

今回の映画化で、埼玉の自虐イメージはさらに濃くなった。しかし、そんなイメージだからこそ愛されるのが埼玉だと確信できた。県知事は映画公開に当たって「悪名は無名に勝る」とコメントしている。関西の方ではあまりこのような抗争は感じ取れないかもしれないが、どの県民同士にもあること。自分の出身地にも照らし合わせてみても良し、また、他の県民同士の争いを笑ってみてもよし。いったん現実を引き離してみてこの映画を鑑賞してみてほしい。

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